本当に大事なコトだけが、最後に残る。インビジョンブック誕生秘話

18年目のマスターピース
6月某日土曜日の午後、雨の新宿。左手に雨傘、右手には印刷会社から受け取った5kgほどのビニール袋。身長150cmの私にしては大荷物だが、歩いて駅へ向かうスピードはいつもの2倍。雨を避けるためじゃない。袋の中身、刷りたての「インビジョンブック」を見たくてたまらないのだ。約1ヶ月間、人事・広報チームで脳汗かいて制作しながら、「これは一生モノになる」と確信していた一冊。帰宅するや否やビニールシートで包まれた冊子の束を袋から取り出したところで、一瞬だけ躊躇。「誠吾さんに渡すまで開封しない方がいいかな…いや、我慢できない…!」ビニールシートのセロハンテープを慎重に剥がす。1冊だけそっと引き抜き、ついに表紙をめくる。部屋でひとり、涙が…といいたいところだが、実際にはニヤニヤが止まらない。早くみんなに見て欲しい。みんなって誰だ。インビジョンメンバー、お客さん、パートナーさん、両親、学生の恩師、友だち、歴代の推し…これまでの人生でお世話になってきたみんなだ。想いをカタチにできたマスターピースに感極まる。インビジョン生誕18周年、記念すべき成人の節目に発行した渾身作がこちら。
「大人になるって、わるくない」

ミッションは、「採用ピッチ」の制作だった。採用ピッチとは一般的に30ページほどの会社説明資料。制作を控えた私は少し気が遠のくのを感じていた。プレッシャーで心が重い。
制作を控えた5月某日、私は吸い込まれるように近所の本屋へ立ち寄った。「ちょっとでも気分が乗るアイデアが見つからないかな」と店内をうろついていると、ある一冊に目が止まった。POPEYE6月号。キャッチコピーは「大人になるって、わるくない」。ニクいなあ。ちょっと控えめに添えられた「いくつになっても成長しないシティボーイたちへ」というメッセージも愛おしい。思わず手が伸びる。奥に広がる世界に採用ピッチのヒントがあると、私の直感が反応している。ページをめくると、大人のロマンを具現化するようなヒト・モノ・コトが茶目っ気たっぷりのビジュアルと言葉で紹介されていた。アイテム紹介からインタビューの出だしまで、どこまでも作り手本人の憧れや感情が滲む。だからこそ読み手は好奇心をくすぐられちゃうんだよな。
……これだ。採用ピッチだって、求職者にとって新しい世界への入り口じゃん。うわー、こういうの作りたい。早くみんなに話したい!即刻買って帰路についた。
クスクス5割、ヒイヒイ5割。渾身の想いをカタチに

オフィスへ向かう道中、足取りが軽い。誠吾さん含め人事・広報メンバーとの企画会議で、鞄に忍ばせていたPOPEYEを机に広げる。「採用ピッチの常識を捨てます」という言葉とともに、まだ穴だらけのラフを出す。POPEYEから着想を得たいきさつを興奮気味に話すと智菜さんからまさかの一言。「ねえ、私も同じ号買ったんだけど!」鳥肌!誠吾さんも「大人になるって、わるくない。本当、そんな感じなんだよなあ。ピッチも紙にしちゃえばいいじゃん。」と乗り気。あー、こうやって「良い」と思う物事を同じように受け取ってくれる人たちがいるから、私はこのチームにいるんだな。なんだか答え合わせができたような気持ち。
しかし!ここからが肝心。自分が受けた興奮を昇華するのは簡単ではない。これがクリエイティブの醍醐味でもあり、難しさでもある…。と私がわかったようなことをふかしているうちに、こっしーが古い雑紙風のデザインに変換。趣旨とニュアンスを汲み取ってカタチにする力が凄まじい。
一方、私はページ内容に苦戦。せっかく紙で作ろうとしているのに、中身はHPへのアクセスを促すためのQRコードが散乱。あれもこれも見てほしい!と鼻息の荒さを感じる仕上がり。「1番伝えたいコトってなんだっけ?」誠吾さんの一言で、我に帰った。もはや求職者だけでなく全ステークホルダーへ送るプロローグとして、自然としっくり来たテーマがある。誠吾さんがインビジョンの「働く幸せを感じる、かっこいい大人を増やす」という志を持つきっかけとなり、智菜さんや私がインビジョンに惹かれたきっかけとなり、同期のまこちゃんが業務委託を経て正社員にカムバックするきっかけとなった言葉。「100億円より100年続く会社」だ。
夜な夜な同じ広報チームのまこちゃんと原点回帰し、構成を切り直す。同じ気持ちで向き合う同期がいることが、心強くてたまらない。「いや〜、これはいいのができるね」と話しながら、全ページの輪郭が出来上がっていく。そこに一単語一文字心を込めた文章を載せる。誠吾さんも創業原点を内省し、したためてくれた。

↑載せちゃう。
ようやく全ページが埋まったところで、誠吾さんから一言。「やっと8割ぐらいだね。ここからだよ。」クゥ〜〜〜!鬼の校正とともに、ゆうさんがこっしーのデザイン案を全ページに宿し、6月13日(金)21:00近く、全ての修正を終え入稿完了。(華金の夜に、裏表紙の「ドドン」の位置を微調整しているサメは、多分世界でゆうさんだけ。)
クスクス5割、ヒイヒイ5割。渾身の想いをカタチにするって簡単じゃないけど、作り手が楽しまないと叶わない。そうやって「良いものを遺す」ことにこだわり抜いた私たち、最高のチームだ!採用とは「世の中にどう役に立っていきたいか、というノリが合う人のつながりを生むこと」。制作の過程で定義した言葉の意味を、自で行けてる気がする。
心のある仕事、やってみよう。

インビジョンの採用コンセプトは「やってみよう」。一番背中を推されているのは人事の私かもしれない。心が震えるコンテンツからインスパイアされ、クリエイティブに昇華できた。それも、おんなじことを大事にしながら、おんなじチームに集ったメンバーと一緒に。今、人生でいちばん心を惹かれてしょうがない「100億円より100年続く会社」というテーマを、チームで探究していく入り口にようやく立った。これだから仕事って面白い。大人になるってわるくないんだよなあ。
作り終えた時、「大人になるって、わるくない」という価値観を私に授けてくれた人生の先輩方への感謝が込み上げてきた。本の著者やアーティストが自分の作品に「Special Thanks」を添える気持ちがちょっとわかった気がする。両親、お世話になった恩師、大学時代にバイトをしていたCDショップ……私の人生には、子どもみたいに好奇心を忘れず働く大人の集まりが度々登場する。そんな大人のもとで育った結果、私はインビジョンというチームと出会い、このブックを作ろうと思ったのだろう。
きっかけを与えてくれたPOPEYEも、日本に多く残る「100億円より100年続く会社」も同じで。誰かが純粋な好奇心と利他の精神で試行錯誤してきたことだけが、誰かの心に残り、やがてカルチャーとなり、時代に溶け込む。そんな心のある仕事をする人生とチームを、ずっと追い求めていきたいな。