人は、面白いところに集まる。”人間の原理原則”から考える「心を動かす採用広報とは?」

「根建、静岡のHRサミットで登壇してきてほしい。」誠吾さんから声がかかった。静岡県内の人事・経営者向けに、採用活動のヒントになる知見をシェアするのが私の役割らしい。誠吾さんは続けて「作り手が楽しんでる感じでよろしく。」と言い残して去っていった。そういう時は好きにしろって合図だ。

200人以上の人事経営者に聞いていただける機会。せっかくだから、調べたら出てくる情報でなくて、生生しい情報をお届けしたい。お客さんの採用支援はじめて10年。人事役員になって7年。私はこの間何を受け取っただろう。振り返ってみた。人員計画、予算作成、集客手法、広報戦略、選考基準・・・。良い採用に必要なピースをあげればキリがないが、伝えたいことは一つだった。

しずおかHR Summitとは?

静岡新聞社・静岡放送主催の「人と組織の未来を考える、静岡から。」をテーマにしたイベント。人材・採用・育成・定着の課題解決を目的とし、採用・育成・人的資本経営・AI活用など経営者や人事担当者が“明日から動ける実践知”を学べる場。

サミットでお話したテーマがこちら。本コラムでは、当日の内容を再現してお届けします。

はじまりは退職代行から来た一本の電話

採用支援会社の人事役員が声を大にして言うのも情けないのですが。今年、わずか入社3カ月のスタッフが退職代行で辞めるというイベントがありました。日ごろ「良いチームをつくろう」「大切なのは本質的な人のつながり」と言っている我々にとって、それはセンセーショナルな出来事でした。

採用に関わるメンバーとマネージャー陣を集めて、どこに問題があったかみんなで振ると、ボトルネックは目先の利益を求めた雇用の在り方にあったね。という結論に至りました。我々企業側も、辞めたスタッフも。

例えば、辞めた社員は前職の無機質な労働環境からの解放を。例えば、我々は業界・職種経験に目先の戦力を。思えば、「誰のどんな役に立ちたいか」という長期的な心づもりは、てんでチグハグでした。その流れで、「ってことは、”採用”の定義自体が甘っちょろかったのでは?」という話にまで発展します。行き着いたのは、「採用とは、”世の中にどう役に立ちたいのか”というノリの合う人のつながりを生むこと。」これが、私たちが思うほんとうの採用です。

このお話は、少し前のインビジョン通信にも書き残しました。

『インビジョン通信8月号』より

薄い雇用を生み出す犯人は、「無機質な求人原稿」だった。

スタンスの問題点がはっきりしたことで、より課題をはっきりさせようと行き着いたのは、出会いのきっかけ、求人原稿の内容でした。当時の求人原稿をひっぱり出せるとよかったのですが、惜しくも断捨離済みだったので、ここはchatGPTに力をかります。

「世の中に一番流通してそうな求人原稿のサンプルを作ってみて」とお願いすると、さすがchatGPT、なんとも既視感のある原稿を書いてくれました。

冷静に一読すると、ふむふむ。無機質で、浅くて、心まで響く言葉が一つもない。そんな印象をうけました。なんでこうなっちゃうんでしょう。他でもない、我々採用に関わる大人の仕事が、業務的すぎるんだと思います。人の心を動かす本質を忘れちゃってる。求人原稿とか採用ページをそれっぽく作っても、中身が業務的だと、伝わらないんですよね。結局。現代人が1日に受け取る情報量は、平安時代の一生分。江戸時代の1年分。よっぽど心が動いたコンテンツしか、目に留まらないのにね。

余談ですが、人間って2000種類の感情があるんです。

ことばにできない微妙な感情も含めると、人間には約2000種類もの感情があると言います。なんて退屈しないんでしょう。にもかかわらず、「今どんな気持ち?」って聞かれた時に、私たちが日常で想起できることばって、平均7個だけだという説も。ひょっとすると、仕事中に至ってはもっと少ないんじゃないかと思います。

だけどね、例えばこうして見れば、選べる気がしませんか。

そう、感じていないんじゃなくて、気づけていないだけなんですよね。そんな日常を繰り返すうちに、いよいよ薄まって何感じてるかわかんなくなっちゃった。っていうのが、今の業務的な人事なんだと思います。自戒を込めてね。その無心状態で採用コンテンツをつくれば、それはそれは無機質な原稿が出来上がる。そういうことなんだと思います。

感情ごと、生々しくいこう。

そこで今一度、先ほどの原稿を振り返ってみます。俯瞰すると、「あなたにとって働きやすい環境がありますので、どうかうちに来てください」と言わんばかりの、求職者に迎合するような内容だと気づきます。するとどうでしょう。下の図でいう左下の人ばかりを引き寄せるのも、当然のような気がします。前提、誰しも所属するチームによって右上にも右下にも左上にも左下にもなり得ると思っています。例えば私はインビジョンでは右上だと思うけれど、別のチームでは左下になるかもしれません。誰のどんな役に立ちたいか?という会社のベクトルが、会社と自分とで同じかどうか否かで、誰しも変わる余地はありそうです。

ここまで見えるとやることは明確。「誰のどんな役に立ちたいか」という長期的な心づもりに力を入れることにしました。

あれこれ自分たちの発信を確認してみると、インビジョンの社会価値である「100年先まで承継する、粋なチームを育てる」そのために、本質的な雇用を増やすための採用を支援していきたい。そういう類の発信が、思いの外少ないことがわかりました。その日を境に、自分たちが日々そこに向かいながら抱いた感情を、良いことも悪いことも含めて生々しく発信することに決めました。その時の感情も、こちらのコラムにしたためています。コツコツ育てたコンテンツを紹介します。

[ 内定者に人気だった採用コンテンツ ]

⚫︎ 求人原稿

⚫︎ 採用ページ

⚫︎ ドキュメンタリー動画

⚫︎ メンバー紹介ページ(あの日をきっかけに全員書き直しました)

⚫︎ 自社コラム

[ 新たに仕掛けた企業広報コンテンツ ]

⚫︎ Invision Book(採用ページ下部)(制作秘話

⚫︎ コーポレートサイト

⚫︎ ポッドキャストラジオ『気まぐれ経営ドキュメンタリー

⚫︎ 新メディア『むかしむかしのことじゃった

やっぱり居たんだね

真心こめてコツコツ発信を増やして数ヶ月。そう簡単に結果のでるものでもないし、やりたいことが一緒の人が、本当にいるのか、どこにいるのかも分からない。けどね、3人の新しいメンバーを迎えることができました。(泣ける)やっぱり居たんだね。

新メンバーのスタッフ紹介ページは12月中に公開。うちのコンテンツのどこに心が動いたのか?当時の気持ちも丁寧に描写してくれています。

インビジョン、このまま行こう。