最強のレスラーが、団体を強くするわけじゃない。 勝敗を分けるのはペルソナ・コンセプト
この春、インビジョンに入社して10年、人材営業を始めて25年目を迎えた。
はやいものだ。20年以上もこの仕事を続けていると、成功も失敗も、それなりに経験してきた。
そんな僕だが、仕事以上に人生とともに長く付き合っているものがある。
それがプロレス。
休日は後楽園ホールへ足を運び、気づけば実況アナウンサーばりにデカい声援をあげている。
何がそんなに面白いのか。
もちろん試合そのものも好きだけど、一番惹かれるのは団体ごとの世界観の違い。
昔は、一つの大きな団体の中でライバル関係や抗争が生まれ、物語が完結していた。
でも今は違う。
現在は団体が複数に細分化され、それぞれの団体が自分たちの世界観をつくっている。
そして、団体のエースや看板選手が、それぞれの団体のプライドを背負って戦う「対抗戦」が数多く生まれている。その構造がたまらなく面白くて、昔以上にどっぷりハマっている。
単純に「どっちが強いか」を競っているわけではない。
その選手が背負っている団体の理念や歴史まで含めてぶつかり合う。
だから、一試合一試合に重みがある。
そして、どの団体もプライドをかけて生き残るために必死だ。
群雄割拠の時代だからこそ、「スター選手」を育てなければ団体は生き残れない。
有名選手を他団体から迎え入れることもある。
その選手がまた別の団体へ移籍したり、フリーになったりすることも珍しくない。
だから本当に必要なのは、「この団体を自分が大きくする」と思える選手の獲得、育成だ。
ただ、せっかく育てた選手も世界観がマッチしていなければ他に流出してしまう。
結果、ファン離れが起こる。それでは意味がない。
団体のビジョンや世界観を愛し、団体の未来を自分ごととして考えられる選手。
そういう選手こそ、ファンの心を掴み、結果として団体の顔になり、長く愛され続けるスターになる。
そして、この話は採用と驚くほどよく似ている。
人材採用を考える際、ついスキルばかりに目が向いてしまう。
もちろん、経験や能力は大事だ。
でも、本当に考えなければいけないのは、そこだけじゃない。
自社のビジョンや価値観に、心から共鳴してくれるのはどんな人なのか。
どんな考え方を持ち、どんな未来なら一緒につくっていけるのか。
そこを曖昧にせず、徹底的に言葉にする。
それが、採用におけるペルソナ・コンセプト設計なんだと思う。
昔の僕は、「採用を考えている風」だった
実は以前の僕は、採用を分かっているつもりになっていた。
例えば、Indeedの数値を毎日のように見て、
・CTRが何%だったか
・クリック率が改善したか
・応募数は増えたか
そんな数字ばかりを追いかけていた。
「とりあえず応募が来てほしい」「誰に来てほしいか」より、「何人応募が来るか」。
条件を良く見せれば応募は増える。タイトルを工夫すればクリックされる。
そう考えていた。

もちろん、それも大切。
でも今思えば、その頃の僕はトップロープまでは勢いよく上り観客を煽るのに、「このあと何の技を出すんだっけ?と迷って、そのまま何事もなかったようにリングへ着地しちゃうレスラーみたいなものだった。
トップロープに上ることが目的になっていて、その先に何を決めるのかが抜けていた。
応募を増やすことまでは考えていた。
でも、その先に「誰と働きたいのか」「どんな人を仲間にしたいのか」が抜けていた。
応募は来る。でも、定着しない。面接をしても、「思っていた会社と違った」。そんなことが起きる。
採用できても、すぐ辞めてしまう。結果として採用コストだけが増えていく。
数字だけを追っていても、本質は何も変わっていなかった。
「求職者」ではなく「想いを持った1人の人間」
ペルソナ設計という言葉を聞くと、「理想の人物像をつくること」だと思われがちだ。
でも、実際は少し違う。本質は、「誰と未来をつくりたいのか」を決めること。
見方を変えれば、「誰とは合わないのか」を決めること、と言ってもいい。
採用を「人数」だけで捉えてしまうと、「できるだけ多くの人に来てもらいたい」という考えになる。
だから求人には、未経験歓迎、経験者歓迎、若手歓迎、ベテラン歓迎、成長したい人歓迎、安定したい人歓迎…
と、あらゆるメッセージを詰め込んでしまう。
でも、それで出会った人たちって、本当に長く一緒に戦える仲間になるんだろうか。
それってプロレス団体が「ストロングスタイルもやります、ルチャもやります、デスマッチもやります」と
全盛りするようなもの。一見、間口は広がったように見える。
でも結局、「この団体は何がしたいんだ?」となって、世界観がぼやけ、誰の心にも残らない。
全員に好かれようとした瞬間、誰にも選ばれなくなる。
これは採用だけではなく、ブランドづくりにも共通することだと思う。
「いい人が欲しい」の曖昧さ
採用の相談に乗っていると、決まって「とにかくいい人が欲しいんだよね」という言葉を耳にする。
その気持ち、痛いほどよく分かる。でも、一度深呼吸して考えてみてほしい。
「いい人」ほど、実体のない曖昧な言葉はない。
なぜなら、立っているリングが違えば、求められる強さも定義もガラリと変わるから。
例えば、自律駆動でどんどん攻めるタイプが「いい人」とされる団体もあれば、
一歩引いてチームを支え、和を重んじる職人肌が「いい人」とされる団体もある。
あるいは、派手な技はなくても、何十年もリングを守り続ける堅実な人が「いい人」の場合だってある。
どれが正解なんてない。だからこそ、最初の一歩は「いい人」を探し回ることじゃない。
自分たちにとっての「いい人」がどんな人物なのか、徹底的に言語化することだ。

ここを曖昧にしたままだと、採用が苦戦したときに、つい間口を広げようとしてしまう。
・スキル重視の経験者
・ポテンシャル秘めた若手
・明日から動ける即戦力
・定年まで寄り添う安定志向
そうやって全盛りしたメッセージは、結局のところ誰の心にも刺さらず、世界観がぼやけてしまう。
これ、プロレスで例えると分かりやすい。ヒールなのか、ベビーフェイスなのか。
試合ごとに立ち位置がブレるレスラーを見ても、ファンは「結局、何がしたいの?」と冷めてしまう。
何を見せたいのか不明瞭なレスラーには、誰も感情移入できない。
ファンに愛されるのは、自分は何者で、何を信じてそのリングに立っているのかという、揺るぎないアイデンティティがある選手だ。
採用だって、それと同じ。
「誰でも歓迎」という甘い言葉ではなく、「この指とまれ」と言える独自の基準を持つこと。
自分たちの「いい人」を定義する。その覚悟こそが、採用におけるペルソナ・コンセプト設計の正体なんだと思う。
右上の人、そして「脈々さん」
自分たちが本当に求める仲間は誰なのか。インビジョンでは、長年その問いに向き合い続けてきた。
「この人と一緒に未来をつくりたい」そう思える人物像を、社内では「右上の人」と定義している。
好奇心があって、思いがけず利他的。
「何をするか」よりも、「何のために、誰と働くか」を大切にする人だ。
つまり、うちで言えば「100年先まで継承する粋なチームを育てる」ために「仕事を遊び以上の冒険」と捉えているような仲間と一緒に働きたい人だ。

でも、求人原稿にそのまま「右上の人募集」と書いても、その想いは伝わらない。
じゃあ、右上の人はどんな言葉に心が動くんだろう。
どんな会社なら、「この人たちと働きたい」と思うんだろう。
そんなことを考え続ける中で生まれたのが、「脈々さん」というペルソナだった。
脈々さんは、給与や休日、企業規模といった条件だけで会社を選ばない。
代表メッセージを読んだり、社員紹介を見たり、発信されているコンテンツに触れながら、「この会社は何を大切にしているんだろう」「この人たちとなら面白い仕事ができそうだな」と、その会社の空気を感じ取ろうとする。
これも、僕の愛するプロレスにどこか似ている。
勝敗だけを見て満足するファンもいれば、レスラーがどんな想いで戦っているのか、団体がどんな世界観をつくろうとしているのかまで知りたくなるファンもいる。
長く応援する人は、勝ち負けだけじゃなく、その背景にある物語に惹かれている。
仕事選びも、きっと同じだ。
条件だけを見るのではなく、「この人たちとなら、自分らしく働けそうだ」と思えるかどうか。
その瞬間に、「ここで働きたい」という気持ちが生まれる。
だからこそ、「どうすれば応募が増えるか」ではない。
右上の人と出会うために、脈々さんにはどんな言葉が届くんだろう。
採用ペルソナ・コンセプトとは、その答えを見つけるためにある。
コンセプトが言葉をつくる
採用ペルソナ・コンセプトが定まると、伝えたいことが明確になる。すると、自然と言葉も変わってくる。
インビジョンには、
「働く幸せを感じるかっこいい大人を増やす」
「100年先まで継承する粋なチームを育てる」
という言葉がある。
どれも、流行りのキャッチコピーではない。
自分たちが本気で信じていることだ。
例えば、「100年先まで継承する粋なチームを育てる」という言葉。
これは、100年続く会社をつくりたいという話ではない。
価値観や想いが、人から人へ受け継がれ、世代が変わっても「インビジョンらしさ」が残り続ける組織をつくりたい、という意味だ。
目先の売上や採用人数だけを追うのではなく、「この会社で働けて良かった」と思える仲間を増やし、その想いが次の仲間へ受け継がれていく。
そんなチームをつくりたいと思っている。

だから言葉にも、一切妥協しない。自分たちが本当に信じていることだけを書く。
だから届く。だから共感が生まれる。
そして、その一つひとつの言葉が採用のタッチポイントになっていく。
求人原稿、採用サイト、コラム、動画、SNS…
どこで出会ったとしても、「あ、この会社なんか好きだな。」
そう感じてもらえる。
採用ペルソナ・コンセプトとは、そんな一貫した言葉を生み出す土台なんだと思う。
ゴングが鳴る前に、勝負は決まっている。
結局、採用はテクニックだけでは続かない。
IndeedのCTRを改善することも、応募数を増やすことももちろん大切だ。
でも、それはゴングが鳴ってからの話。本当の勝負は、その前に始まっている。
どんな人と未来をつくりたいのか。何を信じ、何を大切にしている会社なのか。
その答えが決まっている会社ほど、言葉に迷いがない。
求人原稿も、採用サイトも、コラムも、動画も、SNSも。
採用ペルソナ・コンセプトとは、応募を増やすためのテクニックじゃない。
リングに上がる前に、自分たちが誰と未来をつくりたいのかを決めること。
結局、勝負はそこから始まっている。
プロレスには、不思議と採用にも通じる言葉が多い。
「自分でやる気になること。これも技術のうち」という名言がある。
この言葉を初めて聞いたときは、「やる気まで技術なのか」と思った。
でも今は、その意味が少し分かる気がしている。採用も、応募させることが目的じゃない。
「この会社で働きたい」そう自分で思ってもらえること。
そのきっかけをつくることも、採用の技術なんだと思う。
そして最後に、僕が一番敬愛するレスラーの言葉を借りたい。
「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」
採用も同じだ。求人原稿を作る前に、「誰と未来をつくりたいのか」。
その覚悟だけは決めて、リングへ上がることが必要だ。
▼インビジョンのコンテンツ、良ければ巡ってみてください。
https://www.invision-inc.jp/media/
この記事を書いた人

セールス ゼネラルマネージャー
上方盃屋



